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バズも広告もゼロ。オーストラリアの個人開発者Mike Hillが“退屈なB2B SaaS”5本を同じ型で回して月商$200Kに積み上げるまで

Curator.io・Frillなど地味なB2B SaaSを5本運営するMike Hill。TikTokもバズも有料広告も使わず、「既に買い手がいるレッドオーシャンを選ぶ→UXと価格で勝つ→LTDで立ち上げる→初日からSEO」という同じ型を製品ごとに回し、完全ブートストラップで合計 月商約$200Kに到達した。

公開日: 2026年7月22日4分で読了一次情報で検証済み · 5
月商換算
約3,000万円/月
ローンチ
2018
バズも広告もゼロ。オーストラリアの個人開発者Mike Hillが“退屈なB2B SaaS”5本を同じ型で回して月商$200Kに積み上げるまで

この事例の要点

  • 既に有料顧客がいるレッドオーシャンを選ぶ(競合の集客=需要の証明。空白より“混んでいる市場”を歓迎する)
  • ゼロから発明せず、競合の不満(使いにくい・高い・不親切)を潰した“感じの良い代替”をUXと価格で作る
  • 立ち上げはLTD(ライフタイムディール)で:AppSumo/プライベートLTDで初期キャッシュ+早期ユーザー+レビューを一気に獲得する

どの痛点を、どう見つけたか

個人開発の“痛点探し”というと新奇なアイデア探しに向かいがちだが、Mike Hillの答えは真逆だ。彼が狙うのは「競合が既に有料顧客を抱えている=需要が証明済みのレッドオーシャン」。痛点は自分で発掘するのではなく、競合のレビュー欄・Redditの愚痴・使いにくいUX・不親切なサポート・高すぎる価格の中に“既に言語化されて転がっている”。やることは発明ではなく、その不満を1%潰した“感じの良い代替”を出すこと——需要の有無を確かめる最難関を、競合の存在そのものが肩代わりしてくれる。

背景とプロダクト

Mike Hillはオーストラリア・シドニーの個人開発者(build-in-public名 @my_mate_mike)。Curator.io(ウェブサイトやイベントに埋め込む“ブランド用SNSまとめウィジェット”)、Frill(顧客フィードバックを集めてロードマップ化し、更新を告知する製品管理ツール)、Juuno(小規模店舗向けデジタルサイネージ)、Flook(ノーコードのオンボーディングツアー作成)など、地味なB2B SaaSを5本運営し、合計で月商約$200Kに達している。うち3本が確立済み、2本は開発中だ。

彼のプロフィールで見落とせないのは、これが“初挑戦の一発当て”ではないこと。Mikeは以前シドニーのデジタルエージェンシーHollerを創業した経験者で、デザインとマーケの土台がある。そのうえで彼が徹底しているのは、派手さゼロの“退屈な”やり方だ。ローンチ製品はどれもTikTokのバズもインフルエンサーも使わない。むしろ「バズる消費者アプリ」ではなく「毎月確実に少額を払ってくれるB2Bの業務ツール」を、複数本、同じ手順で淡々と積み上げる。

中核は“再現可能な型”だ。(1)すでに有料顧客がいるレッドオーシャンを選ぶ(競合の集客が需要の証明になる)。(2)ゼロから発明せず、競合の不満点——使いにくいUX・高すぎる価格・不親切なサポート——を潰した“感じの良い代替”を作る。(3)立ち上げはLTD(ライフタイムディール=買い切りの生涯ライセンス)で。AppSumoやプライベートLTDで初期キャッシュ・早期ユーザー・レビューを一気に確保する(Frillでは初期にプライベートLTDで約$30Kを調達したと本人が語る)。(4)初日からSEOコンテンツを書き、被リンクに投資する。有料広告は「小さなブートストラップB2Bでは割に合わない」として基本使わない。(5)Redditでは宣伝せず、質問に答え不満を拾って助ける——それが製品フィードバックにも検索露出にもなる。

そしてこの型を1製品ずつ横展開し、ポートフォリオとして分散と複利を効かせる。独立集計のgetlatkaによれば、5本のうちCurator.io単体でも2024年に年商$644.2K(2023年の$514.8Kから成長)。2018年のCurator.ioローンチから約8年、彼は“バズらないB2B”を退屈に積み重ねてここまで来た。

Curator.io growth channels and tech stack

再現できる手順

  1. 1既に有料顧客がいるレッドオーシャンを選ぶ(競合の集客=需要の証明。空白より“混んでいる市場”を歓迎する)
  2. 2ゼロから発明せず、競合の不満(使いにくい・高い・不親切)を潰した“感じの良い代替”をUXと価格で作る
  3. 3立ち上げはLTD(ライフタイムディール)で:AppSumo/プライベートLTDで初期キャッシュ+早期ユーザー+レビューを一気に獲得する
  4. 4LTDは点火装置と割り切り、そこで得たユーザー基盤の上に月額サブスクを積んでMRR化する
  5. 5有料広告に頼らず、初日からSEOコンテンツを書き被リンクに投資する(眠っていても客を運ぶ“貯まる資産”)
  6. 6Reddit/Quoraでは宣伝せず質問に答え不満を拾う(製品フィードバック+自然な検索露出を同時に得る)
  7. 7同じ型を次のレッドオーシャンへ横展開し、ポートフォリオで分散と複利を効かせる(1本の当たりに賭けない)

つまずき・苦労

再現性の限界も正直に。第一に、Mikeは元エージェンシー(Holler)創業者でデザイン・マーケの土台と人脈を持つ経験者であり、完全な初心者が同じ速度で回せるとは限らない。第二に、LTDは“前借り”だ:生涯ライセンスを売った顧客からは将来のMRRが生まれず、点火後にサブスクへ移行できなければ息切れする。第三に、これは“遅い”戦略である:Curator.ioのローンチ(2018)から月商$200Kまで約8年、SEO/被リンクは効き始めるまで一般に1年以上かかる。第四に、レッドオーシャンは技術的な堀が無いため、UX・価格・サポートの優位を5製品分“運用で維持し続ける”地道な負荷が常に掛かる。要は、バズの代わりに退屈な継続と運用体力を差し出す戦略だという点を理解したうえで真似るべきだ。

深掘り分析

【深掘り】バズ・広告・資金調達のどれも使わないMike Hillの型を、個人開発者が真似られる粒度まで分解する。ポイントは“何をやるか”ではなく“順番と、あえてやらないこと”にある。

■ 1. 需要検証を競合に肩代わりさせる(レッドオーシャンを歓迎する) 多くの個人開発者は「誰もやっていない空白」を探して時間を溶かすが、空白はたいてい“需要が無いから空いている”。Mikeは逆に、競合が現に有料顧客を抱えている市場だけを選ぶ。競合の存在は、市場調査で最も難しい「本当にお金を払う人がいるか?」に既に答えを出してくれている。ソーシャルまとめ(Curator)、フィードバック/ロードマップ(Frill)、デジタルサイネージ(Juuno)——どれも彼が発明したカテゴリではない。勝負は“無”からの創造ではなく、証明済み需要の奪い取りだ。

■ 2. 差別化は「機能」ではなく「UX・価格・感じの良さ」で取る レッドオーシャンで勝つ差は、派手な新機能ではない。競合のレビュー欄とRedditの愚痴に既に書かれている不満——使いにくい、高い、サポートが不親切——を1つずつ潰し、“同じことをもっと感じよく・もっと妥当な値段で”提供する。Frillの原点は、ある競合の横柄な対応に腹を立てて「もっと親切な代替を作ろう」と動いたことだったと本人が語る。個人開発者にとってこれは福音だ。技術的な堀は要らない。要るのは、既存プレイヤーが手を抜いている“体験と価格と対応”の徹底である。

■ 3. LTD(ライフタイムディール)を“発射装置”に使う——ただし燃料であって機体ではない 新規B2Bの最大の壁は「実績ゼロで最初の有料顧客と口コミが取れない」こと。MikeはこれをLTDで突破する。AppSumoやプライベートLTDで買い切りライセンスを売り、(a)初期キャッシュ(Frillでは約$30Kを調達)、(b)本気で使う早期ユーザー、(c)公開レビューと社会的証明、を一度に獲得する。重要なのは位置づけだ。LTDは生涯ライセンス=そのユーザーからは将来のMRRが生まれない“前借り”であり、事業の本体ではなく点火装置。ここで得た初期ユーザーとレビューを土台に、以降は月額サブスクへ移行して積み上げる。LTDで火を点け、サブスクで燃やし続ける、という二段構えだ。

■ 4. 有料広告を捨て、コンテンツ/SEO/被リンクに複利を効かせる Mikeは「有料広告は小さなブートストラップB2Bでは割に合わない」と断言し、基本使わない。代わりに初日からSEOを意識したコンテンツ(競合比較・代替候補・ハウツー)を書き、被リンクに投資する。広告は止めた瞬間に流入も止まる“消える資産”だが、上位表示されたコンテンツは眠っている間も見込み客を運び続ける“貯まる資産”。Reddit/Quoraでは宣伝せずに質問へ答え、不満を拾う——これが製品改善のネタと、自然な言及・検索露出を同時に生む。広告費ゼロで顧客獲得を回すこの選択が、外部資本を要らなくしている根っこだ。

■ 5. “1本の当たり”ではなく“同じ型のポートフォリオ”で複利を取る Mikeの真の武器は特定の1製品ではなく、上の型そのものだ。型が確立していれば、次の製品は「別のレッドオーシャンに同じ手順を当てる」だけで立ち上がる。5本のポートフォリオはリスク分散(1製品が失速しても全体は倒れない)と複利(各製品のSEO資産・レビュー・キャッシュが並行して積み上がる)を同時に効かせる。派手な単発ではなく、退屈な再現性を資産化する設計思想だ。

■ 6. 時間軸の直視——これは“遅い”戦略である 最後に、本事例のいちばん正直な部分。Curator.ioのローンチは2018年、そこから月商$200Kまで約8年かかっている。TikTokで数ヶ月で跳ねる消費者アプリとは時間の桁が違う。SEOと被リンクは効き始めるまで一般に1年以上かかり、LTDのキャッシュは一時的、B2Bの解約対策や運用は地味に重い。Mikeの数字が魅力的なのは“速いから”ではなく“止めなかったから”だ。個人開発者への含意は明快で——バズを引けないなら、退屈さと継続を武器に変えろ、である。

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