AI Dev Cases
Momego

雨のバス停で生まれたMomego — スコットランドの元グラフィックデザイナーが独学14年、『多言語ASO』だけで交通アプリを5.2M DL・月商$30Kに育てた話

元グラフィックデザイナーの John McEvoy が独学で作った公共交通トラッカー。バス・電車の現在地と到着時刻をリアルタイム表示する。有料広告やバズに頼らず、都市ごとの『多言語ASO(キーワードのローカライズ)』で160都市に浸透。ソロ運営のまま累計5.2M DL・DAU40万・月商$30Kに到達した。

公開日: 2026年8月5日3分で読了一次情報で検証済み · 5
月商換算
約450万円/月
ユーザー数
520万
ローンチ
2012
雨のバス停で生まれたMomego — スコットランドの元グラフィックデザイナーが独学14年、『多言語ASO』だけで交通アプリを5.2M DL・月商$30Kに育てた話

この事例の要点

  • 毎日使う“地味な実用”×検索の領域を狙う(バズやAIが無くても、日常の小さな不満は世界中で同じ)
  • 多言語ASOを主エンジンにする:都市・言語ごとにストア表記を現地の実検索語へ最適化し、対応都市を増やすたびオーガニックの水道を1本ずつ増やす
  • 継続はreverse trial+ウィジェット/ライブアクティビティで設計する(毎日ロック画面に食い込ませて解約理由を消す)

どの痛点を、どう見つけたか

『次のバスはあと何分?』という日常の小さな不安は世界中どこでも同じ。McEvoy自身、エディンバラの雨のバス停で『Uberは車が近づいてくるのが地図で見えるのに、なぜ公共交通は見えないのか』と痛感した。既存の乗換案内は路線検索は得意でも“いま自分のバスがどこにいるか”のリアルタイム性が弱い——この万人共通の小さな不満が、そのまま160都市に展開できる市場の入口になった。

背景とプロダクト

Momegoは、バスや電車の現在地・到着予測をリアルタイムの地図で見せる公共交通トラッカー。ウィジェットやライブアクティビティで『次の便まであと何分』をロック画面に出し、停留所アラートで降り遅れを防ぐ。派手なAI機能ではなく、通勤・通学で毎日使う“地味な実用”に振り切っているのが特徴だ。

作ったのはスコットランド・エディンバラの John McEvoy。もともとはグラフィックデザイナーで、2012年に『自分のバスがいつ来るか知りたい』という自分自身の不満(scratch your own itch)からコードを独学し、地元エディンバラのバス到着アプリを作ったのが原点だ。以来ソロ(個人=Transit Now ltd / ブランドは TravelWhiz)で開発を続け、いまや世界160都市をカバーするまでになった。

注目すべきは“集客の仕方”だ。Momegoはインフルエンサーやバズ動画、大型の有料広告に頼っていない。伸びの主エンジンは徹底した『ローカライズASO』——App Storeのタイトル・キーワードを都市や言語ごとに現地語で最適化し、『bus times』『次のバス』のような各地の実際の検索語で上位を取る。日本語を含む各国語のストア表記まで作り込むことで、CACをかけずに各都市のオーガニック検索から新規ユーザーを取り込む。ソロの個人開発者が、資本力のある大手交通アプリを検索面で出し抜く構図だ。

マネタイズは一夜にして決まったわけではない。当初の売り切り(有料DL)、次に広告モデル、そして現在のサブスクへと3度作り替えてようやく噛み合った。無料で使える基本機能に、ウィジェット/ライブアクティビティ等のプレミアムをサブスクで乗せる形で、月商$30K・DAU約40万という数字に到達している。“14年かけたひと晩の成功”とも言える、遅い複利の事例だ。

Momego growth channels and tech stack

再現できる手順

  1. 1毎日使う“地味な実用”×検索の領域を狙う(バズやAIが無くても、日常の小さな不満は世界中で同じ)
  2. 2多言語ASOを主エンジンにする:都市・言語ごとにストア表記を現地の実検索語へ最適化し、対応都市を増やすたびオーガニックの水道を1本ずつ増やす
  3. 3継続はreverse trial+ウィジェット/ライブアクティビティで設計する(毎日ロック画面に食い込ませて解約理由を消す)
  4. 4Apple Search Adsはオーガニックで勝ち筋が見えたキーワードにだけ収益的に薄く重ねる(需要確認が先・広告は後)
  5. 5マネタイズは一発で当てにいかず作り替える前提(Momegoは有料→広告→サブスクと3度転換)
  6. 6アイコン・価格・オンボーディングを継続的にA/Bして転換率を運用で上げる

つまずき・苦労

Momegoは“14年かけたひと晩の成功”。元グラフィックデザイナーのMcEvoyが独学でコードを覚え、2012年の開始から現在の形に至るまで、売り切り・広告と2つのマネタイズが噛み合わず、サブスクにたどり着くまで作り替えを繰り返した。派手なローンチ譚は無く、対応都市とストア表記を1つずつ積む地道な複利の産物だ。

深掘り分析

【深掘り】Momegoは、DBの中では珍しい『非AI・非バズ・非米国』の実用アプリだ。派手さゼロの交通トラッカーが、なぜソロのまま月商$30Kまで積み上がったのか。効いた順に分解する。

■ 堀①:多言語ASO=“翻訳可能な集客” 最大の武器は、都市・言語ごとにApp Storeのメタデータ(タイトル/サブタイトル/キーワード)を作り込む『ローカライズASO』だ。乗換・バス到着の検索語は国ごとに違う(英語圏の『bus times』、他言語圏の現地語)。McEvoyはこれを一括翻訳で済ませず、各ロケールの実際の検索語に合わせて最適化する。結果、新しい都市に対応するたびに“その都市のオーガニック検索”という新しい水道が1本開く。これはCACゼロで横展開でき、しかも競合の多くが英語圏中心にしか最適化していないため、資本力のある大手より個人が勝てる隙間になっている。5M+ installの大半はこのオーガニックが源泉だ。

■ 堀②:Apple Search Ads(ASA)は“オーガニックが当たった後”に重ねる McEvoyはASAで無理に規模を作りにいくのではなく、ローカライズASOで既に反応が取れているキーワードに対して収益的に(profitablyに)広告を重ねる。つまり『オーガニックで需要と勝ち筋を確認 → その上に有料を薄く乗せる』順番。これはCal AI的な“需要確認が先・広告は後”の交通ユーティリティ版で、刺さらない語に広告費を溶かさない。

■ 継続の設計:reverse trial × ウィジェット/ライブアクティビティ 収益の土台はサブスクの“継続率”だ。McEvoyは本人インタビューで、モバイルでは通常の無料トライアルより『reverse trial(最初にプレミアムを体験させ、期限が切れると無料版に落ちる)』の方が効くと語る。加えて、毎朝ロック画面に出るウィジェットとライブアクティビティが『次のバスまであと何分』を差し込み続けるため、アプリが生活動線に食い込む=解約理由が消える。実用アプリの解約防止は“機能で毎日思い出させる”のが最短だという実例だ。

■ 遅い複利:14年・3度のマネタイズ転換 Momegoは2012年開始。売り切り→広告→サブスクと3度モデルを作り替えて、ようやく現在の形に噛み合った。派手なローンチ譚は無い代わりに、『対応都市を1つずつ増やし、ストア表記を1言語ずつ最適化し、課金モデルを検証で入れ替える』地道な複利で積み上がっている。“18ヶ月ロケット”型の対極にある、長期・低リスクの個人開発の見本だ。

■ 日本の個人開発者への持ち帰り (1)派手なAIやバズが無くても、毎日使う実用×検索で勝てる領域はまだある。(2)ASOは“1回の最適化”ではなく“都市・言語の数だけ増える資産”として設計する(日本語ストア表記も自分で詰める)。(3)有料広告はオーガニックで勝ち筋が見えてから薄く重ねる。(4)実用アプリの継続はウィジェット/ライブアクティビティで生活に食い込ませる。(5)マネタイズは一発で当てにいかず、プロダクトに合うまで作り替える前提で構える。

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