非エンジニアがCursorとClaude Codeで作ったProfit AI — クライアント用スプレッドシートを5ヶ月でMRR$30KのShopifyアプリに変えるまで
コンサル時代にクライアント用へ作り続けた利益分析スプレッドシートを、非エンジニアのJackがCursor+Claude CodeでShopifyアプリ化。約5ヶ月でアプリMRR$30K・累計$147Kに到達した。集客はすべて口コミで、価格は$5,000→$800へ下げて当てた。
どの痛点を、どう見つけたか
EC(Shopify)ブランドとその支援エージェンシーは、原価・手数料・広告費・返品を差し引いた「本当の利益」が見えないまま走っている。多くは大量のスプレッドシートに手入力し、毎月バラバラのデータを突き合わせて疲弊する。Jackはコンサルとしてこの作業を何年もクライアントごとに繰り返しており、痛点を「自分の手作業」として誰よりも具体的に知っていた——その繰り返しこそがプロダクトの種になった。
Profit AIは、Shopifyストア向けの「利益分析(FP&A)スイート」。売上ではなく、原価・手数料・広告費まで差し引いた純利益/貢献利益をリアルタイムで可視化し、目標設定や広告プラットフォーム連携、チームのタスク管理までを一つにまとめる。狙う相手はEC事業者本体と、それを支援するマーケ/コンサルのエージェンシーだ。
作ったのはJack。長年、EC事業者やエージェンシーのコンサルとして働き、そのたびに「利益・広告のROAS・シナリオ試算」を計算する精緻なスプレッドシートをクライアント向けに作り続けてきた。ある日、その「毎回作っている表」こそがプロダクトだと気づく。ここが本作の肝で、アイデアは外から降ってきたのではなく、自分がすでに繰り返している手作業の中にあった。
Jack自身は非エンジニア。それでも、AIコーディングツール(Cursor と Claude Code)を使い、クライアント用スプレッドシートのロジックをそのままShopifyアプリへ翻訳して作り切った。2024年12月にローンチ(審査はクリスマスに通過)。エンジニアを雇わず、コードは書けないまま、AIに何度もプロンプトを投げて間違いを直しながら完成させた点が、いま最も再現性のある部分だ。
さらにProfit AIは、SaaS本体の外側に「人力サービス」を薄く重ねている。マイアミ/ニューヨークの大手エージェント向けには、Claudeで動くSlackボットがデータ依頼を受け取り、カスタムのデータをスプレッドシートに納品する。SaaSの月額に、人手の伴走を足してARPUと信頼を底上げする構図だ。
結果、ローンチから約5ヶ月で累計$147,000、アプリ単体のMRRは$30,000(サービス込みで約$40,000)に到達した。しかもこの間、広告や大掛かりなローンチは打っていない——伸びはすべて口コミである。
再現できる手順
- 1新しいネタを探さず、自分が金をもらって繰り返している手作業を棚卸しする
- 2その中でスプレッドシートで解いているものを1つ選ぶ(表のロジック=そのままAIへの仕様書)
- 3非エンジニアでもCursor+Claude Codeで表のロジックをアプリへ翻訳する(完璧でなくていい、AIの間違いを直し続ける)
- 4既に痛みを知る相手(過去/現在のクライアント網)にまず出す=口コミで初速をつくる
- 5価格は「決める」のでなく「探索する」:高め($5,000)で出し、取れなければ即下げる($800)
- 6製品で届かない最後の一歩は人力サービス(Slackボット等)で埋め、単価と信頼を上げる(後から自動化)
最初の有料プランは$5,000/月という強気の価格で出したが、取れたのはごく数社だった。素早く$800/月へ下げてはじめて契約が動き出した——価格は最初から当てるものではなく、市場の反応を見て探索するものだという学び。また総ユーザー122に対し有料は38〜39社で、転換率にはまだ伸びしろがある。
深掘り分析
【深掘り】この事例の価値は「非エンジニアがAIで作った」の一言では終わらない。本当に効いたのは、①種の選び方 ②作り切る現実的な進め方 ③価格の探索 ④SaaSにサービスを重ねる設計 の4点だ。順に分解する。
■ 種は「自分が毎回やっていた手作業」にあった Jackは新しいアイデアを探しに行っていない。コンサルとしてクライアントごとに作り続けた利益分析スプレッドシート——原価・手数料・広告ROAS・シナリオ試算——という、既に何度も再現していた作業をそのまま製品化した。ここが多くの個人開発者と決定的に違う。彼は(1)痛点が本物であること(自分が金をもらって解いていた)、(2)解の形がすでに固まっていること(表のロジックが仕様書そのもの)、(3)最初の顧客が誰かを知っていること(過去/現在のクライアント)を、着手前から握っていた。「繰り返している手作業はプロダクトの下書き」というのは、そのまま再現可能な発想法だ。
■ 非エンジニアでも作り切る:AIに投げて直す体力 Jackはコードを書けない。それでもCursorとClaude Codeを使い、スプレッドシートのロジックをShopifyアプリへ翻訳して完成させた(一部の要約ではCodexの併用にも言及がある)。ここでの学びは「AIが全部やってくれる」ではない。むしろ逆で、鍵は「よく定義された仕様(=既存のスプレッドシート)」を持っていること、そしてAIの間違いを何度も指摘して直し続けるスタミナだ。仕様が曖昧なら、AIコーディングは迷走する。Jackが速く作れたのは、作るべきものが自分の頭と表の中に既に完全にあったからだ。2024年12月、エンジニアを雇わずにローンチまで到達した。
■ 価格を探索する:$5,000 → $800 本作で最も実務的な教訓がこれだ。Jackは有料プランを当初$5,000/月という強気の価格で出した。だが取れたのはごく数社。そこで素早く$800/月へ引き下げると、契約が動き出した。ポイントは2つ。(1)価格は「決める」ものではなく「探索する」もの——高めに出して反応を見て、取れなければ即座に下げる。(2)それでも$800/月という単価は、コンシューマーアプリの月$10とは桁が違う。B2B(事業者/エージェンシー向け)は、たとえ顧客数が38〜39社でも、単価の高さでMRR$30Kに届く。個人開発者が「少ない顧客数で生活費」を狙うなら、コンシューマーの薄利多売より、痛点の深いB2Bの高単価×少数の方が現実的な場合がある、という実例だ。
■ SaaSに「人力サービス」を薄く重ねる Profit AIはソフト単体で完結させていない。マイアミ/ニューヨークの大手エージェント向けには、Claude製のSlackボットがデータ依頼を受け、カスタムのデータをスプレッドシートに納品するサービスを提供する。これでMRRはアプリ単体の$30Kから、サービス込みで約$40Kへ押し上がる。示唆は明快で、初期のB2B SaaSでは「製品が届かない最後の一歩」を人力で埋めると、単価・継続・信頼が同時に上がる。将来その人力部分を製品化(自動化)していけばよい——最初から全部を製品で解こうとしないのが、むしろ立ち上げを速くする。
■ マーケゼロ・口コミだけで$147K:効いた土台 JackはまだSNSバイラルも広告も本格的なローンチも打っていない。伸びは100%口コミだ。これが成立したのは、種の段階で「既に痛みを知る相手(過去/現在のクライアントとその周辺のエージェンシー網)」を握っていたから。つまり集客チャネルは、着手前の人的ネットワークに内包されていた。一方で、総ユーザー122に対し有料は38〜39社——転換率は伸びしろがある。裏を返せば、まだマーケの伸びしろを丸ごと残したまま$147Kまで来ている、とも読める。
■ 再現するには(非エンジニアの型) まとめると型はこうだ。(1)自分が金をもらって/繰り返しやっている手作業を棚卸しする。(2)その中でスプレッドシートで解いているものを1つ選ぶ(仕様が既に固まっている=AIコーディングと相性最高)。(3)Cursor/Claude Codeで、その表のロジックをアプリへ翻訳する(完璧でなくていい、直し続ける)。(4)既に痛みを知る相手にまず出す(口コミが初速)。(5)価格は高めで出し、取れなければ即下げる。(6)製品で届かない最後の一歩は人力で埋め、後から自動化する。数字(38〜39社で$30K MRR)が示すのは、少数の高単価B2Bが非エンジニア個人にとって現実的な生活費ルートになり得る、ということだ。