週末に作った『ただのタイマー』が月商$25K — Lukas Hermannが超ニッチ×ドキュメントSEOで5年かけて積み上げたStagetimer
ドイツの個人開発者Lukas Hermannが週末に作った、ブラウザで遠隔操作するイベント用カウントダウンタイマー。派手なAIもバイラルも無く、超ニッチな一機能とドキュメント主導SEO・フリーミアムの口コミだけで、外部資金ゼロ・約5年かけて月商$25Kのブートストラップ事業に育てた。
- 月商換算
- 約375万円/月
- 成長期間
- 55ヶ月
- ローンチ
- 2020
この事例の要点
- 派手なAI・バイラルを狙わず、狭い業界の『誰も解いていない地味な一機能』に絞る(登壇者の残り時間を遠隔で見せるだけ)
- 各連携・ユースケースごとに超ロングテール高意図キーワードの解説記事+チュートリアル動画を作り、検索の受け皿を量産する(ドキュメント主導SEO)
- 無料枠を会場の本番画面に映す→他の制作者が見て次の現場で使う、をフリーミアムの流通装置にする
どの痛点を、どう見つけたか
きっかけは友人の映像スタジオ。登壇者に残り時間を伝えるために、友人はわざわざ別室の古いノートPCまで走り、時代遅れのFlash製タイマーを手で操作していた。『会場の全員に見える、手元から遠隔で押せるタイマー』がブラウザには存在しなかった——この“誰も解いていない地味な不満”が、そのまま市場の入口だった。
背景とプロダクト
Stagetimer(stagetimer.io)は、ブラウザだけで動く『イベント・配信用の遠隔カウントダウンタイマー』。操作用の画面(タブレット等)から、会場の大画面や登壇者のモニターに映すタイマーを遠隔でスタート/ストップ・調整できる。カンファレンス、ライブ配信、教会の礼拝、TV収録などで『登壇者にあと何分かを正確に伝える』という一点に特化している。
作ったのはドイツ・シュトゥットガルトの個人開発者Lukas Hermann。2020年11月、友人の映像スタジオを訪れたとき、友人が登壇者の時間を測るために別室の古いノートPCへ走り、Flash製の古いタイマーを手で操作しているのを見た。調べても、ブラウザで動く遠隔タイマーは存在せず、数個のネイティブアプリがあるだけ。彼は最初のバージョンを“ある週末”で作り、11月19日にRedditへ投稿してフィードバックを募った。反応は上々で、有料機能の要望まで来たため、そのまま作り続けた。2021年に勤め先をレイオフされたのを機に専業化。のちに妻でパートナーのLiz Hermannも加わり、外部資金を一切入れないブートストラップで運営している。
プロダクトの思想は徹底して『退屈なほど単純』。派手なAI機能もバイラルも無い。代わりに、イベント制作という狭い業界の“地味だが確実に困る”一機能を、ブラウザ1つで完結させた。無料プランでも中核機能は使え(広告なし)、有料はサブスク(月/年)に加えて、1回のショーだけ請け負うプロ向けの数日間だけ使える短期ライセンスを用意する。この価格設計自体が、後述の集客と噛み合っている。
料金
無料プランあり(中核機能・広告なし)。有料は月/年のサブスク(概ね$10前後〜)に加え、1回のショー向けに数日間だけ使える単発ライセンスを用意。
本人の発信(一次情報)
"Turning a simple B2B solution into a $15k MRR SaaS by exploiting a market niche" Being covered by @krhignett along such amazing folk as @Matt_heyqq and @DmytroKrasun 🤩 indiehackers.com/post/tech/turn…
どうやって作ったか
- 派手なAI・バイラルを狙わず、狭い業界の『誰も解いていない地味な一機能』に絞る — 登壇者の残り時間を遠隔で会場の全員に見せる、それだけ
- 友人の映像スタジオで、登壇者の時間を測るために別室の古いノートPCへ走りFlash製の古いタイマーを手で操作している現場を見て、ブラウザで動く遠隔タイマーが存在しないことを確認する
- 最初のバージョンを『ある週末』で作る
- 機能を足して総合ツールを目指さない — ニッチが狭いほど競合は少なくSEOでも上位を独占しやすい(『こんな単純なもので稼げるのか』という侮りこそ参入障壁の裏返し)
- 無料プランでも中核機能を広告なしで使えるようにし、有料はサブスク(月/年)に加えて、1回のショーだけ請け負うプロ向けに数日間だけ使える短期ライセンスを別建てで用意する
どうやって広めたか
- 最初のユーザーはRedditの当事者コミュニティで直接見つける — 2020年11月19日に投稿してフィードバックを募ったところ有料機能の要望まで来た
- 有料広告ではなく検索を最大の集客エンジンにする(トラフィックの約50%がGoogle経由)
- 各連携・ユースケースごとに解説記事とチュートリアル動画を作り、『Countdown Timer Stream Deck Companion』のような超ロングテール×高意図キーワードの受け皿を1本ずつ量産する(検索する人は既にその機材でタイマーを操作したいと決まっている=そのまま顧客になる)
- フリーミアムを流通装置として使う — 無料のタイマーはイベント本番の大画面に映り、会場にいる他の制作者・技術スタッフの目に必ず触れる(トラフィックの約33%が口コミ由来)
- 18ヶ月ロケットを狙わず、単機能を毎月積み上げて約5年で$25K/月へ複利で伸ばす(フリー→有料化まで8ヶ月、0→€1kまで10ヶ月、€1k→€5kまで8ヶ月、€5k→€10kまで10ヶ月)
- Google広告は伸びの上乗せに留める — オーガニック検索と口コミという無料の柱が別に立っているので利益率は約85%
- 最初のユーザー
- Redditのイベント制作コミュニティ(2020年11月19日の投稿)
- 初期の広告費
- Google広告は伸びの上乗せのみ。オーガニック検索(約50%)と口コミ(約33%)が主柱で利益率約85%
再現できる手順
- 1派手なAI・バイラルを狙わず、狭い業界の『誰も解いていない地味な一機能』に絞る(登壇者の残り時間を遠隔で見せるだけ)
- 2各連携・ユースケースごとに超ロングテール高意図キーワードの解説記事+チュートリアル動画を作り、検索の受け皿を量産する(ドキュメント主導SEO)
- 3無料枠を会場の本番画面に映す→他の制作者が見て次の現場で使う、をフリーミアムの流通装置にする
- 4サブスクを嫌う『単発で請け負うプロ』向けに、数日間だけの使い切りライセンスを別建てで売る
- 5最初のユーザーはRedditの当事者コミュニティで直接見つける
- 618ヶ月ロケットを狙わず、単機能を毎月積み上げて約5年で$25K/月へ複利で伸ばす(広告は伸びの上乗せに留め利益率85%)
つまずき・苦労
華々しい急成長ではない。€639 MRR(2021年末)→ €10k(2023年9月)→ $25k/月(2025年)と、実に約5年かけての複利だった。単機能ゆえ『こんな単純なもので稼げるのか』と侮られ、専業化のきっかけもレイオフ、最初のユーザー獲得(Reddit投稿)も手探り。派手なローンチではなく、ロングテールの解説記事を1本ずつ積む地道さが土台にある。
深掘り分析
【深掘り】Stagetimerは、本DBに多い『18ヶ月でロケットのように伸びるB2Cバイラル』とは正反対だ。派手なAIも短尺動画も無く、退屈な単機能を5年かけて複利で積んだ。その“地味さ”の中に、日本の個人開発者がそのまま真似できる再現性の高い型が詰まっている。順番に分解する。
派手さを捨て、“退屈な単機能”に賭ける
Stagetimerがやることは『残り時間を、遠隔で、会場の全員に見せる』——それだけ。機能を足して総合ツールを目指すのではなく、イベント制作という狭い業界で“確実に困るが誰も本気で解いていない”一点に絞った。ニッチが狭いほど競合は少なく、SEOでも上位を独占しやすい。『こんな単純なもので稼げるのか』という侮りこそ、参入障壁の裏返しだった。
ドキュメント主導SEO:ロングテールの受け皿を量産する
最大の集客エンジンは有料広告ではなく“検索”だ。トラフィックの約50%はGoogle経由。彼らは各連携・ユースケースごとに解説記事とチュートリアル動画を作り、『Countdown Timer Stream Deck Companion(配信機材Stream Deckで操作するタイマー)』のような超ロングテール×高意図キーワードの受け皿を1本ずつ量産した。検索する人はすでに“その機材でタイマーを操作したい”と決まっている=そのまま顧客になる。プロダクトを1本作って終わりではなく、ユースケースの数だけSEOページを増やせるのが単機能ニッチの強みだ。
プロダクトが会場で“広告”になる — フリーミアム=流通装置
無料プランは慈善ではなく流通戦略だ。無料のタイマーはイベント本番の大画面に映る=会場にいる他の制作者・技術スタッフの目に必ず触れる。『これ何のツール?』と聞かれ、次の現場で使われる。フリーミアムが“業界内の口コミ装置”として働き、トラフィックの約33%が口コミ由来になった。プロダクトそのものが露出面になる設計は、広告費をかけずに同業者へ横展開する強力な複利を生む。
サブスクを嫌う層に“単発ライセンス”を売る
イベント制作者の多くは、1回のショーのためだけにツールを使う請負のプロだ。彼らに月額サブスクは重い。そこでStagetimerは、数日間だけ有効な使い切りの短期ライセンスを別建てで用意した。『サブスクはしたくないが今日の現場では確実に欲しい』という層を取りこぼさず現金化する——顧客の“働き方”に価格を合わせた好例で、単純なサブスク一本槍では拾えない売上を拾っている。
5年かけて複利で伸ばす(18ヶ月ロケットの対極)
数字の推移は、フリー→有料化まで8ヶ月、0→€1kまで10ヶ月、€1k→€5kまで8ヶ月、€5k→€10kまで10ヶ月。派手な単月バイラルは一度も無い。2021年末€639、2023年9月€10k、そして2025年に$25k/月。焦って大きく張るのではなく、ロングテール記事を1本ずつ積み、機能を1つずつ足す“遅い複利”が本質だった。専業化のきっかけがレイオフだった点も含め、劇的な物語ではなく淡々とした継続が土台にある。
Google広告の経済学と85%の利益率
最大のコスト要因はGoogle広告だが、オーガニック検索と口コミという“無料の柱”が別に立っているため、広告は伸びの上乗せに留められる。結果、利益率は約85%という高水準。少人数(のちに数名)・低コスト運営で、売上のほとんどが手元に残る。個人開発者にとっての学びは明確だ——AIやバズが無くても、『狭い痛点 × 検索の受け皿の量産 × プロダクト自体を流通に使う』を組み合わせれば、静かに、しかし堅牢に生活費を超える事業は作れる。
よくある質問
- Stagetimerはどこの国の誰が作った?
- ドイツ・シュトゥットガルトの個人開発者Lukas Hermann。2020年に週末で最初の版を作り、のちに妻でパートナーのLiz Hermannと少人数・ブートストラップ(外部資金ゼロ)で運営している。
- 料金は?無料で使える?
- 無料プランで中核機能を広告なしで使える。有料は月/年サブスク(概ね$10前後〜)に加え、1回のショー向けに数日間だけ有効な単発ライセンスがある(最新の金額は公式の料金ページを参照)。
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