解雇の翌日に10日で作ったaiCarousels — デザイナーが『審美眼』を堀に、退屈なデザインツールのポートフォリオで月$15Kを1日4時間で稼ぐまで
アルゼンチン出身のデザイナーFernando Pessagnoが、解雇を機に休暇中の10日間build-in-publicでAIカルーセル作成ツールaiCarouselsを出荷。約8ヶ月で月$5K・月間8万ユーザーへ。履歴書ツール等と合わせ、デザイン系ニッチのポートフォリオで月$15Kを1日約4時間で稼ぐ。
- 月商換算
- 約75万円/月
- 成長期間
- 8ヶ月
- ユーザー数
- 8万
- ローンチ
- 2023
この事例の要点
- レッドオーシャンは『機能』でなく『審美眼』で割る——非デザイナーが貼るだけで垢抜ける“デザイナー品質”そのものを製品化する
- 磨きすぎず10日で出荷する——解雇の不安を『10日で作って公開する』という自作の締切に変え、最速で“課金”のシグナルを取りにいく
- build-in-publicを二役で使う——Xで数字を公開して集客し、毎週の“人間味ある”更新メールで解約を防ぎフィードバックを集める
どの痛点を、どう見つけたか
LinkedInやInstagramで伸びる『カルーセル投稿』は、作るのが地味に面倒だ。Canva等でスライドを1枚ずつ整え、文字を流し込み、余白を揃える——非デザイナーには時間がかかるうえ、なかなか垢抜けない。Fernando自身が受託デザイナー10年で『毎回ゼロから整える退屈』を痛いほど知っていた。aiCarouselsはこの摩擦を『テキストを貼るだけでデザイナー品質のカルーセルが出る』一点に絞って消しにいった。既存ツールに残る“結局デザインの素養が要る”という不満が、そのまま市場の入口だった。
背景とプロダクト
aiCarouselsは、テキストを貼るだけでAIがLinkedIn / Instagram / TikTok向けの『カルーセル投稿』を自動でデザインしてくれるWebツール。テンプレートと自動レイアウトで、デザインの素養が無い人でも“垢抜けた”スライド束を数分で作れるのがコアだ。
作ったのはアルゼンチン出身のプロダクトデザイナー、Fernando Pessagno(@Fer_MOMENTO)。アルゼンチンで約10年デザイン受託スタジオを回した後、スウェーデン(Malmö)へ移住。ビザで働く身で、休暇に出る前日に解雇通知を受けるという“最悪のタイミング”に見舞われる。休めるはずもなく、不安を紛らわすために始めたのが『10日間で作って公開する』build-in-publicチャレンジだった。磨きすぎず、2023年5月に出荷。ローンチ初日に5人が課金して$50 MRR、30日で$500 MRRを超えた。
aiCarouselsはProduct Huntで“Product of the Day”9位に入り、以後は毎週の“人間味のある”更新メールでユーザーの声を拾いながら改善。約8ヶ月で月商約$5,000(MRR)、月間8万ユーザー超に達した。粗利率は約95%、初期費用は実質ゼロ——個人開発で再現しやすい経済構造だ。
そして重要なのは、彼が1本に賭けていないこと。aiCarousels(AI)に加え、2018年開始で累計80万DL超の履歴書ツールResumeMaker.Online、スライド生成のGeneratePPT.com、無料のPreviewMyProfile.comなど、『デザイン×明確な検索意図』という同じ型の小さなツールを束で持つ。ポートフォリオ全体では月商約$15,000・累計$50万超を、1日約4時間の労働で回している。派手なバイラルではなく、デザイナーの審美眼と地道なbuild-in-publicで積み上げた“静かな複利”の事例だ。
本人の発信(一次情報)
One of the November @aicarousels updates I’m super proud of is the upgrade to the AI Image Assist feature. Now it picks up on the color selection, so the suggested images are way more likely to match the #carousel style.
再現できる手順
- 1レッドオーシャンは『機能』でなく『審美眼』で割る——非デザイナーが貼るだけで垢抜ける“デザイナー品質”そのものを製品化する
- 2磨きすぎず10日で出荷する——解雇の不安を『10日で作って公開する』という自作の締切に変え、最速で“課金”のシグナルを取りにいく
- 3build-in-publicを二役で使う——Xで数字を公開して集客し、毎週の“人間味ある”更新メールで解約を防ぎフィードバックを集める
- 41本に賭けず、『デザイン×明確な検索意図』の同じ型を退屈な実需(履歴書・スライド・プロフィール)へ横展開する
- 5無料ツール(PreviewMyProfile等)を有料への入口=ファネルにし、SEOで指名検索を複利で積む
- 6自分が10年やってきた領域を選ぶ——当事者だからこそ痛みを製品化でき、当たり判定が速くなる
つまずき・苦労
数字は主に本人のbuild-in-public発信・取材(Starter Story等)に基づく自己申告で、独立した第三者監査ではない(第三者のStartZoneはaiCarouselsを約$4.9K MRRと推定し概ね一致)。ポートフォリオ月$15Kには2018年開始でAIとは無関係のResumeMaker.Onlineの売上が含まれるため、本稿の数値フィールドは主力aiCarouselsのMRR($5K)を保守採用し、$15K・累計$50万超は本文の文脈に留めた。aiCarousels自体もCanva等の大手・多数の類似ツールがひしめくレッドオーシャンで、『審美眼』という堀は模倣されやすく単体では永続しない点に注意。
深掘り分析
【深掘り】aiCarouselsは、Canvaをはじめ無数の競合がひしめく“カルーセル/バナー作成”というレッドオーシャンで生まれた。にもかかわらず個人開発で回せているのはなぜか。順に分解する。
■ デザイナーが選んだ堀は『技術』でなく『審美眼』 aiCarouselsの中身は、AIそのものの凄さで勝っているわけではない。勝負どころは『非デザイナーが貼るだけで、そこそこ垢抜けたものが出る』という“出力の質”だ。フォント・余白・配色・レイアウトという、デザイナーが10年で身につけた暗黙知をテンプレートと自動配置に落とし込み、素人の入力を“プロっぽい成果物”へ翻訳する。機能の多さで殴る大手に対し、Fernandoは『審美眼を製品化する』一点に絞った。個人開発者への含意は明快で、自分が10年培った領域(=自分だけの不公平な優位)を製品に埋め込めば、資本やチームで劣っていても“質”で差別化できる。
■ 解雇の翌日、10日で出荷——“磨かない”という規律 FernandoはaiCarouselsを2023年5月、10日間で作って公開した。ビザで働く身での解雇という強い不安を、『10日で作って公開する』という自作の締切に変換したのがうまい。磨きすぎない・完璧を待たない——だからこそ現実の課金という最速のシグナルを取りにいけた。実際、初日に5人が課金($50 MRR)、30日で$500 MRRを突破。彼が立てた『12ヶ月で$2,500 MRR』の目標は3ヶ月未満で達成された。出荷が早いほど、市場が“本当に金を払うか”を早く知れる——このケースはその教科書だ。
■ build-in-publicを『集客』と『リテンション』の両方に効かせる 多くの人はbuild-in-publicを“集客(認知)”の道具として使う。Fernandoはそれに加えて“解約防止”に効かせた。Xでは数字(MRRの節目)を公開してフォロワーと信頼を積み、同時にユーザーへは毎週、機能追加や修正をまとめた『個人的で人間味のある』更新メールを送る。これがリテンションとフィードバック収集の両輪になり、あるフェーズでは解約率が前月比で下がった。派手なバイラル1発ではなく、“毎週きちんと良くなっている”という体験の積み重ねが、レッドオーシャンでの継続率を支えている。
■ 1本に賭けない——『デザイン×検索意図』ニッチのポートフォリオ Fernandoの最大の特徴は、当てた1本に固執しないことだ。aiCarousels(AI・カルーセル)、ResumeMaker.Online(履歴書・2018〜・累計80万DL超)、GeneratePPT.com(スライド)、無料のPreviewMyProfile.com——いずれも『デザインの素養が要る作業』×『“resume maker”のように検索意図が明確な言葉』という同じ型だ。同じ設計思想を複数の退屈な実需へ横展開することで、単一プロダクト・単一チャネルへの依存を薄め、合計で月$15K・累計$50万超を1日約4時間で運営する“反脆い”構造を作った。1本がコケても全体は倒れない。
■ 無料ツールをファネルに、指名検索を複利で積む ポートフォリオには無料ツール(PreviewMyProfile.com 等)が混じる。これは慈善ではなく“入口”だ。検索意図の強い無料ツールでオーガニック流入と被リンク・ブランド想起を積み、そこから有料ツールへ橋を架ける。SEOで名前が知られるほど指名検索が増え、広告費ゼロでも新規が入り続ける——受託10年で培ったブランディングとデザインの感覚が、そのままマーケティングの複利になっている。
■ 個人開発者への示唆:審美眼は模倣されうる/だから“出荷速度×当事者性×分散” 最後に負の側面も。『デザイナー品質』という堀は、テンプレートやAIの進歩で模倣されやすく、単体では永続しない。だからこそFernandoの型は“堀を1つに頼らない”——出荷の速さ(先に市場に居る)、当事者性(自分が顧客で当たり判定が速い)、分散(複数ニッチ・複数チャネル)を重ねることで、模倣に対する時間を稼いでいる。日本の個人開発者が真似るなら、『自分が10年やってきた退屈な作業』を1つ選び、10日で出荷し、build-in-publicで数字と改善を公開し続ける——ここから始めるのが最も再現性が高い。
よくある質問
- aiCarouselsとは何ですか?
- テキストを貼るだけでAIがLinkedIn / Instagram / TikTok向けの『カルーセル投稿』を自動デザインしてくれるWebツールです。デザインの素養が無くても、テンプレートと自動レイアウトで垢抜けたスライド束を数分で作れます。
- 開発者は誰で、どこの国の人ですか?
- アルゼンチン出身のプロダクトデザイナー、Fernando Pessagno(@Fer_MOMENTO)が個人で開発しました。現在はスウェーデン(Malmö)在住。約10年のデザイン受託を経て、2023年5月に10日間のbuild-in-publicチャレンジでaiCarouselsを出荷しました。
- aiCarouselsは無料で使えますか?料金は?
- 無料プランがあり、月3カルーセルまで(各最大10スライド)作れます。無制限に使いたい場合はPRO(月$14.95・最大20スライド)にアップグレードします(料金は集計サイトの2025–2026年時点の情報。最新は公式サイトでご確認ください)。
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