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AI Dev Cases
Cal AI

17歳が高校の教室で作ったCal AI —「料理を撮るだけ」のカロリー記録アプリが18ヶ月でARR約75億円に到達しMyFitnessPalに売却されるまで

Zach Yadegariら10代の創業チームが作った写真カロリー記録アプリです。料理を撮るだけでAIがカロリーを推定します。外部資金ゼロで18ヶ月・ARR約$50M、累計1,500万DLに達し、2025年にMyFitnessPalへ売却されました。

文・AI Dev Cases 編集部公開日: 2026年6月24日数字の最終確認: 2026年8月13日3分で読了一次情報で検証済み · 2
月商換算
約6.3億円/月
成長期間
18ヶ月
ユーザー数
1,500万
ローンチ
2024
Zach YadegariZach Yadegari@zach_yadegari17歳が高校の教室で作ったCal AI —「料理を撮るだけ」のカロリー記録アプリが18ヶ月でARR約75億円に到達しMyFitnessPalに売却されるまで

再現できる手順

  1. 1万人共通の『面倒』を1アクションで消す(食事を検索・計量せず“撮るだけ”にする)
  2. 2巨大モデルを自作せず、既存の強力AI(GPT系)をプロダクト体験へ翻訳する
  3. 3外注前にまず創業者自身がTikTokの中の人になり、アルゴリズムにターゲット層を学習させる
  4. 4マイクロインフルエンサーに“広告に見えない”ネイティブ動画を量産依頼する(→月商$2Mまで)
  5. 5オーガニックで需要を確認してからパフォーマンス広告に振り切る(回収構造を作ってから投下)
  6. 6単価より普及を優先した価格設計(月$10/年$30)+ Superwallでペイウォールを継続A/B

どの痛点を、どう見つけたか

カロリー記録は『痩せたい人なら誰もが一度は挫折する』定番の苦痛です。食べたものを毎回検索して量を入力する手間が大きく、3日で続かなくなります。Cal AIはこの『記録の摩擦』そのものを消しにいきました——食事を1枚撮るだけです。既存のMyFitnessPal等が抱える“入力がだるい”という万人共通の不満が、そのまま市場の入口でした。

背景とプロダクト

Cal AIは、食事の写真を撮るだけでAIがカロリーとマクロ栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)を推定してくれるアプリです。バーコードや手入力にも対応しますが、コアは『撮るだけ』の体験です。編集部が注目したのは、面倒な検索・計量を不要にしたこの一点です。

作ったのはZach Yadegariを中心とする10代〜20代前半のチームです。Zach(CEO)は7歳でコードを独学し、高校在学中の17歳でCal AIを立ち上げました。コーディングキャンプで知り合ったHenry Langmack(CTO)が加わりました。さらに、X(旧Twitter)上で出会いRizzGPTやUmaxといった消費者向けAIアプリで実績のあったBlake Anderson、Jake Castilloも加わり、2024年5月にローンチしています。

技術的には、画像からカロリーを推定する部分にOpenAIのGPT系モデルを活用しました。自分たちでゼロから巨大なモデルを学習させるのではなく、『既存の強力なAIをプロダクト体験に翻訳する』戦略です。フロントはSwift、バックエンドはNode.js/Python、インフラはFirebase、ペイウォール最適化にSuperwallという、個人開発で再現可能な構成です。価格は月$10または年$30で、単価より普及を優先した設計でした。

そしてローンチから18ヶ月、累計1,500万DL・ARR約$50Mに到達したところで、カロリー記録アプリの代名詞だったMyFitnessPalがCal AIを買収しました。“入力がだるい老舗”が、その不満を消した10代のアプリを取り込んだ構図です。

料金

無料ダウンロード+アプリ内課金。写真からのAI解析結果を見るにはサブスクリプションが必要(App Store掲載のアプリ内課金は $2.99〜$29.99。ほかに「Streak Restore」$0.99)。App Store掲載では課金項目の期間が明示されていない。

アプリ画面

  • 残りカロリーと栄養素を表示するホーム画面。「Calories left 1250」の大きな表示とタンパク質・炭水化物・脂質の残量リング、その下に直近で記録した食事(ファトゥーシュサラダ153kcalなど)が写真付きで並ぶ
  • 料理にカメラを向けて撮影するスキャン画面。パンケーキの皿に認識用のフレームが重なり、下部に「Scan food」の切り替えとシャッターボタンがある
  • 撮影した料理をAIが解析した結果の画面。写真上に「Blueberries 8」「Pancakes 595」「Syrup 12」と食材ごとの内訳が吹き出しで示され、下に合計615kcal、炭水化物93g、タンパク質11g、脂質21g、ヘルススコア7/10が並ぶ
  • 目標に対する進捗を見る画面。上部に90日間の体重推移の折れ線グラフ(現在67kg・目標達成80%)、下に1週間の摂取カロリーを日別の積み上げ棒グラフで示し、タンパク質・炭水化物・脂質の内訳が色分けされている

画像はApp Store・公式サイトの掲載画像を各提供元から直接表示しています(当サイトには保存していません) — Cal AI

本人の発信(一次情報)

Cal AI growth channels and tech stack

どうやって作ったか

  1. 万人共通の『面倒』を1アクションで消す — 食事を検索も計量もせず『撮るだけ』にする
  2. 巨大モデルを自前で学習させず、OpenAIのGPT系モデルでカロリー推定を実装する(『作る』のではなく既存AIをUXへ『翻訳する』)
  3. フロントはSwift、バックエンドはNode.js/Python、インフラはFirebase、ペイウォール最適化はSuperwallという、個人開発でも再現可能な構成にする
  4. 価格は単価より普及を優先し、月$10/年$30に置く
  5. Superwallでオンボーディングとペイウォールを継続的にA/Bし、『どの順でどの画面を見せれば課金に至るか』を数字で詰める
AIに任せた範囲
カロリー推定はOpenAIのGPT系モデルをそのまま使い、自前で巨大モデルは学習させていません(勝負どころは『最先端AIを作ること』ではなく『既存の強力AIを摩擦の無い体験に翻訳すること』)

どうやって広めたか

  1. 外注インフルエンサーに頼る前に、創業者自身がTikTokの『中の人』になる — 健康・フィットネス系のコンテンツだけに反応してフィードを寄せ、アルゴリズムに『この層に配れ』と学習させる
  2. 自分でアプリの使用動画を投稿し、最初のバイラルを自分の手で起こす(オーガニックだけで10万DL。CACゼロで需要シグナルと勝ち筋が同時に手に入る)
  3. 掴んだ『ウケる見せ方』をブリーフに落とし、大物ではなくマイクロインフルエンサーに“広告に見えない”ネイティブ動画を量産させる(数ヶ月で月商$2M)
  4. 需要と刺さる見せ方を確認してから、初めてFacebook/TikTok/Instagramの運用型広告に振り切る(素材は第1〜2段で当たった動画。月$1M超を投下し月商$5.7M)
  5. 初期6ヶ月はアプリストアの入金遅延を創業メンバーが自己資金で立て替え、キャッシュが尽きる前に回す
最初のユーザー
創業者自身が育てたTikTokアカウントからのオーガニック流入(10万DL)
初期の広告費
初期$0(創業者自身のオーガニック)→ 需要を確認してから運用型広告へ。2026年1月時点で月$1M超を投下し月商$5.7M

実際に使ったチャンネル

つまずき・苦労

華々しい数字の裏で、Cal AIは初期6ヶ月、アプリストアの入金遅延を創業メンバーが自己資金で立て替えて運営費・広告費を回していました。編集部は、10代でも『キャッシュが尽きる前に回す』泥臭い資金繰りが土台にあった点を、数字と合わせて読むべきだと考えています。

その後の更新

  1. 2026年8月13日

    MyFitnessPalによる買収は2025年12月に成立し、2026年3月2日に公表された。公表時点で直近12ヶ月の売上は約$40M、2026年通期は$50Mを見込む。Cal AIは単独プロダクトとして継続し、共同創業者のZach Yadegariを含む7人のチームが残留している。

深掘り分析

【深掘り】外部資金ほぼゼロの10代チームが18ヶ月でARR約$50Mに到達するまでに踏んだ『集客の3段ロケット』を、順番ごと分解します。編集部は、“何をやったか”より“どの順でやったか”のほうが重要だと見ています。

第1段:創業者自身がTikTokの“中の人”になる(→ 10万DL)

Zachは外注インフルエンサーに頼る前に、まず自分のTikTokアカウントを育てました。やり方は地味です。健康・フィットネス系のコンテンツ“だけ”に反応してフィードをその層に寄せ、アルゴリズムに『この層に配れ』と学習させます。そのうえで自分でアプリの使用動画を投稿し、最初のバイラルを“自分の手”で起こしました。これが効いた理由は、(1)CACゼロで需要シグナルが取れる (2)どんな見せ方がウケるかの“勝ち筋”を自分で掴める (3)その勝ち筋を次段のインフルエンサーにそのまま渡せる、の3点です。外注から始めると、この学習を他人に丸投げすることになり再現性が落ちます。初期はこのオーガニックだけで10万DLに到達しました。

第2段:マイクロインフルエンサーに“広告に見えない”動画を量産させる(→ 月商$2M)

次に、大物ではなくエンゲージメントの高いマイクロ層へ横展開します。依頼するのは『これは広告です』と分かる動画ではありません。本人が普段の投稿と同じトーンで使ってみせるネイティブ形式です。第1段で掴んだ“ウケる見せ方”をブリーフに落とし込むので、当たり率が高くなります。広告っぽさを消すことが効くのは、TikTokのユーザーが広告を瞬時にスキップする一方、クリエイターの『自分が良いと思ったもの』には強い信頼を置くからです。この型でローンチから数ヶ月で月商$2Mまで伸ばしました。

第3段:オーガニックで需要を確認してからパフォーマンス広告に振り切る(→ 月商$5.7M)

オーガニックとインフルエンサーで“需要がある・刺さる見せ方が分かっている”を確認してから、初めてFacebook/TikTok/Instagramの運用型広告に本腰を入れました。広告クリエイティブの素材は、すでに第1〜2段で当たりが取れている動画です。だからゼロから当てにいくより大きく有利でした。2026年1月時点では月$1M超を広告に投下しつつ、月商$5.7Mを上げています。順番が逆、つまり需要を確認する前に広告から始めると、刺さらないクリエイティブに資金を使い切って終わります。

価格とペイウォール:単価より普及を取る

価格は月$10/年$30と攻めた設定です。単価を上げれば1人あたりの売上は増えますが、彼らは“普及”を優先しました。理由は、写真カロリー記録という体験が口コミ・SNS拡散と相性が良く、ユーザー数そのものが次の集客(UGC・レビュー・紹介)を生むからです。さらにSuperwallでオンボーディングとペイウォールを継続的にA/Bテストし、『どの順でどの画面を見せれば課金に至るか』を数字で詰めました。安い価格でも、転換率と継続率を運用で上げれば十分に回ります。

技術は“作る”より“翻訳する”

カロリー推定は自前で巨大モデルを学習させず、OpenAIのGPT系モデルを使いました。個人開発者にとっての学びは明確です。勝負どころは『最先端AIを自分で作ること』ではなく、『既存の強力AIを、摩擦の無いプロダクト体験に翻訳すること』にあります。Cal AIの堀は技術そのものではなく、撮るだけのUXと前述の集客の型にありました。

見落とされがちな土台:泥臭い資金繰り

華やかな数字の裏で、初期6ヶ月はアプリストアの入金遅延を創業メンバーが自己資金で立て替え、運営費と広告費を回していました。10代でも『キャッシュが尽きる前に回す』という、地に足のついた資金管理が全ての前提でした。

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