AI Dev Cases
Cat on Chair

デザイナーが$200Kの職を捨てて作った「Cat on Chair」— 手描きの猫が隣に座るだけの集中タイマーが、レッドオーシャンで10ヶ月・月商$18Kに届くまで

元プロダクトデザイナーの Ryan Yao が、恋人の猫のイラストとAIコーディングだけで作ったポモドーロ型の集中タイマー。集中モードにすると椅子に猫が座って寄り添う。有料広告ゼロ・Instagramの1本(200万再生)で火が付き、約10ヶ月で累計12.7万DL・月商$18K前後に到達した。

公開日: 2026年8月7日3分で読了一次情報で検証済み · 5
月商換算
約240万円/月
成長期間
10ヶ月
ユーザー数
12.7万
ローンチ
2025
デザイナーが$200Kの職を捨てて作った「Cat on Chair」— 手描きの猫が隣に座るだけの集中タイマーが、レッドオーシャンで10ヶ月・月商$18Kに届くまで

この事例の要点

  • レッドオーシャン(機能がコモディティ化した領域)では機能で競わず、“誰も持っていない世界観・ビジュアル”で別の軸を立てる
  • AIで速く作れる部分(実装)を高速化し、AIに真似できない部分(手描き・情緒・美意識)に人間の時間を集中して堀にする
  • デザイナーでも“自分の得意工程”に凝りすぎない——AIを橋にして作り込みを飛ばし、まず出荷する(Figmaは全工数の5%未満)

どの痛点を、どう見つけたか

集中タイマー/ポモドーロは『すでに何百個も存在する』超レッドオーシャン。機能はどれも似通い、無料で十分。ユーザーの本当の不満は『機能が足りない』ではなく『続けたくならない・味気ない』こと。Cat on Chair はここを突いた——タスク管理の効率ではなく、“作業中に隣に猫がいてくれる”という情緒で「また開きたい」を作り、飽和カテゴリの中で“感情の空白”を市場の入口にした。

背景とプロダクト

Cat on Chair は、集中したい時間だけ椅子に猫が座って隣にいてくれる、ポモドーロ型の集中タイマー(App Store 上の名称は『Cat on Chair: ADHD Focus』)。タイマーを回すと手描きの猫が現れ、作業が終わると去っていく。機能そのものはよくある集中タイマーだが、コアは“手仕事の温かみ”のある世界観にある。

作ったのは Ryan Yao。元プロダクトデザイナーで、年収$200K(約3,000万円)の職を辞め、『自分が幸せになれるもの』を作るために独立した。彼はコードが書けなかったが、2025年前半にAIコーディングがiOS開発でも実用水準に達したと判断し、Claude Pro を“アイデアと実装の橋渡し”として使ってアプリを組み上げた。イラストは恋人が担当し、アプリ名とキャラクターは『恋人の、椅子に座る猫のネックレス』から生まれた。全工数は400時間超だが、デザインツール(Figma)に費やしたのは20時間未満——“自分の本職”であるデザイン工程すらAIで飛ばし、手を動かすことを優先した。

マネタイズは驚くほど素朴だ。ダウンロードは無料で、$29.99の買い切り(ライフタイム解除)が売上の大半を占め、$19.99/年のサブスクが補助的に乗る。サブスク一辺倒が当たり前のアプリ市場で、“一度払えば終わり”の買い切りを主力に据えた逆張りが刺さった。

集客は有料広告ゼロ。火が付いたきっかけは、Instagram に投稿した1本が200万再生を記録したこと。飽和した集中タイマー市場で、“猫が隣にいる”という一目で伝わる情緒がショート動画と相性よく拡散した。結果、約10ヶ月で累計12.7万DL・平均4.93★(290件)、月商$18K前後に到達している。

Cat on Chair growth channels and tech stack

再現できる手順

  1. 1レッドオーシャン(機能がコモディティ化した領域)では機能で競わず、“誰も持っていない世界観・ビジュアル”で別の軸を立てる
  2. 2AIで速く作れる部分(実装)を高速化し、AIに真似できない部分(手描き・情緒・美意識)に人間の時間を集中して堀にする
  3. 3デザイナーでも“自分の得意工程”に凝りすぎない——AIを橋にして作り込みを飛ばし、まず出荷する(Figmaは全工数の5%未満)
  4. 4サブスク一辺倒に逆張り、$29.99の買い切りを主力に据えて高評価と口コミを取りにいく(サブは補助)
  5. 5プロダクトの見た目そのものを“一目で伝わる拡散素材”にし、有料広告ゼロでオーガニック短尺(Instagram)で点火する
  6. 6恋人・パートナーの得意(イラスト)を掛け合わせ、2人でコモディティ化しにくい情緒を作る

つまずき・苦労

数字には幅があり(本人申告 月$18K〜$20K vs 第三者推定 直近30日$16,152)、初速は Instagram の単発バイラル(200万再生)に大きく依存した。世界観という堀は模倣されにくい半面、“次のバイラル”を意図的に再現できるかは未検証で、飽きられる前に世界観のファンをどれだけストックできるかが継続課題になる。

深掘り分析

【深掘り】Cat on Chair の面白さは『集中タイマー』という何百個もある機能で勝ったことではなく、“機能で勝てない場所で、どこで・何で勝つか”を明確に設計した点にある。個人開発者が持ち帰れる分解を5点に絞る。

■ 1. レッドオーシャンでは『機能』でなく『世界観』で割る Ryan の差別化論は明快だ——「この種のアプリは何百回も作られてきた。機能で競うな。ゲームのメカニクスをリミックスし、誰も持っていないビジュアルスタイルに投資しろ」。集中タイマーの機能はコモディティで、無料でも足りる。だから彼は“効率”の軸を降りて、“隣に猫がいる情緒”という別の軸を立てた。飽和カテゴリで新規が勝つのは、既存が満たしている『機能』ではなく、既存が空けている『感情』を埋めるときだ。

■ 2. AIで作れない部分=手仕事の温かみを堀にする 彼は非エンジニアだが、これは“AIで誰でも作れる”物語ではない。むしろ逆で、「AIは機能を素早く作れるが、手仕事の体験は再現できない。そこが競争優位になる」という設計だ。恋人の手描きイラスト・キャラクターの佇まい・世界観の一貫性は、プロンプトでコピーされにくい。AIでコモディティ化する部分(実装)を高速化し、コモディティ化しない部分(情緒・美意識)に人間の時間を寄せる——これがAI時代の個人開発の分業の型になる。

■ 3. “自分の本職”すら手放して出荷を優先する 彼はプロのデザイナーでありながら、Figma に費やしたのは全400時間超のうち20時間未満。デザイナーは往々にして“完璧なデザイン”で手が止まる。彼はAIを松葉杖ではなく『アイデアと実装の橋』として使い、得意分野の作り込みを意図的に飛ばして出荷に賭けた。教訓は逆説的だ——最も時間を溶かすのは、自分が一番得意な工程であることが多い。

■ 4. 買い切り主力=サブスク疲れへの逆張り 売上の大半は$29.99の買い切り(ライフタイム解除)で、$19.99/年サブスクは補助。アプリ業界の定石は“サブスクでLTVを最大化”だが、ユーティリティ性の高い小さなアプリでは『毎月課金され続ける』こと自体が離脱理由になる。一度払えば終わりの明快さは、レビューの高評価(4.93★)と口コミに効く。単価×普及の設計で、ARPUを追うより“良心的に見える価格”で母数と評判を取りにいった。

■ 5. 集客は“一目で伝わる絵”×オーガニック短尺 有料広告はゼロ。点火は Instagram の1本(200万再生)だった。“猫が椅子に座って隣にいる”は説明不要で、音無し・数秒で伝わる=ショート動画のアルゴリズムと相性が良い。ここで効いているのは1と地続きで、“情緒で差別化した世界観”がそのまま“拡散する素材”になっていること。プロダクトの見た目が広告クリエイティブを兼ねるので、CACゼロでも初速が出た。

■ 再現性と限界 この型(情緒的世界観×買い切り×オーガニック短尺)は、機能がコモディティ化した消費者向けユーティリティで強い。一方、数字は本人申告$18K〜$20Kと第三者推定$16,152に幅があり、単発バイラルへの依存度が高い点はリスクだ。世界観という堀は模倣されにくい反面、“次のバイラル”を意図的に再現できるかは未検証——ここが、飽きられる前に世界観のファンをどれだけストックできるかの勝負になる。

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