コードを1行も書かずに2度exitした男 — 非エンジニアSteven Cravottaが禁煙アプリ「Puff Count」を$40K MRRまで育てて売却するまでの型
自分でコードを書かない(AIにも書かせない)非エンジニアのSteven Cravottaは、開発をUpwork等に全外注し「95%はマーケティング」に賭ける。禁煙アプリPuff Countを数百本のオーガニックTikTokで$40K+ MRRへ育て、2024年に大手アプリスタジオへ売却。Wordle!に続く2度目のexitだ。
- 月商換算
- 約600万円/月
- ローンチ
- 2021
この事例の要点
- 作る前に「既に稼いでいる競合」をSensor Tower/Google Trendsで探す(需要をゼロから賭けず、実証済みの市場に入る)
- コードは書かない・書かせない:開発はUpwork、UIは99designsに外注し、時間の100%を『何を作るか/どう売るか』へ
- 有料広告ゼロ。バイラルした既存動画の“型”を真似たオーガニックTikTokを数百本量産し、当たった型を回す
どの痛点を、どう見つけたか
禁煙・禁ベイプは「やめたいのにやめられない」万人共通の依存。既存の禁煙アプリは説教くさく続かない一方、市場には既に課金しているユーザーがいた。Cravottaはこの『既に稼いでいる競合がいる=需要が実証済み』のレッドオーシャンを、あえて痛点の入口に選ぶ。ゼロから需要を賭けるより、既に金が落ちている所で“少しだけ良い体験”を作るほうが速いからだ。
背景とプロダクト
Puff Countは、ベイプ(電子タバコ)をやめたい人のための禁煙アプリ。吸った回数を記録し、目標日を決めて少しずつ本数を減らし、最終的にやめる——というシンプルな体験に絞られている。作ったのはSteven Cravotta。ここで重要なのは、彼が『コードを書かないアプリ開発者』だという点だ。エンジニアでもなく、AIにコードを書かせる“バイブコーディング”派でもない。開発はUpwork、UIデザインは99designsで外注し、自分は『何を作るか』と『どう売るか』だけに集中する。
彼の口癖は「アプリの成功の95%はマーケティングだ」。だからアイデアの選び方も逆算されている。ゼロから新奇な市場を賭けるのではなく、Sensor TowerやGoogle Trendsで『既に稼いでいる競合がいる』ことを確認してから参入する。禁煙・禁ベイプはまさにそれ——需要が実証済みのレッドオーシャンだった。検証を通ったら$5,000以下でMVPを外注し、素早く出す。
集客の主戦場はTikTok。有料広告は使わず、バイラルしている既存の禁煙・ベイプ関連動画の“型”を研究し、それを真似た短尺動画を数百本という単位で量産した。当たった型を回し続けることで、CACゼロのままユーザーを積み上げる。収益化はハードペイウォール(機能に触れる前にトライアル→$9/週へ課金)で、SuperwallでA/Bテスト、RevenueCatでLTVを計測して数字で詰めた。
こうしてPuff Countは月商$40K超(MRR)に達し、2024年に大手アプリスタジオへ売却された。彼にとってこれは2度目のexitだ。1度目は、18歳のときに作った同名の別アプリ『Wordle!』——2022年にNYTのWeb版Wordleが大流行した際、名前を勘違いしたユーザーが彼の古いアプリを大量DLし、棚ぼたの収益が発生した。彼はそれを$50,000寄付し、後にアプリ自体をAppLovinへ譲渡した。『幸運の棚ぼた』と『再現できる型』を切り分けられる冷静さが、この人物の核にある。
本人の発信(一次情報)
I SOLD Puff Count 🎉 Proud to officially announce my second mobile app exit Years of hard work Hundreds of organic TikToks Ultimately scaled the app to $40k+ MRR Secured a deal with a massive app studio Here is the moment it happened 👇
再現できる手順
- 1作る前に「既に稼いでいる競合」をSensor Tower/Google Trendsで探す(需要をゼロから賭けず、実証済みの市場に入る)
- 2コードは書かない・書かせない:開発はUpwork、UIは99designsに外注し、時間の100%を『何を作るか/どう売るか』へ
- 3有料広告ゼロ。バイラルした既存動画の“型”を真似たオーガニックTikTokを数百本量産し、当たった型を回す
- 4ハードペイウォール($9/週・トライアル先出し)+ SuperwallでA/B・RevenueCatでLTVを計測し、転換率と継続を運用で上げる
- 5アプリを『育てて売れる資産』として設計し、勝ったらexitして資金と信用を次の大勝負へロールアップする
- 6棚ぼたの幸運(Wordle!)を実力と勘違いせず、再現できる型だけを淡々と磨く
つまずき・苦労
彼の出発点『Wordle!』の収益は実力ではなく偶然だった——18歳で作った古いアプリが、無関係なNYT版Wordleの流行で名前を勘違いされ大量DLされただけ。Cravottaはその棚ぼたの$50,000をオークランドの非営利Boost!へ寄付し(NYT版の作者Josh Wardleと合意の上)、後にアプリをAppLovinへ譲った。幸運を“自分の型”と混同しない規律が、運任せでないPuff Countのexitに繋がっている。
深掘り分析
【深掘り】Steven Cravottaの本当の価値は「禁煙アプリを当てた」ことではなく、“コードを一切書かない人間が、アプリを資産として作り→売る”という反復可能な型を確立している点にある。順に分解する。
■ 型1:作る前に「既に稼いでいる競合」を探す(=需要の逆算) 多くの個人開発者は『誰も作っていない新しいもの』を探して沈む。Cravottaは逆で、Sensor TowerやGoogle Trendsで“既に課金ユーザーがいる”カテゴリを特定してから入る。競合が稼いでいる事実は、市場調査の何百時間分より確実な需要のシグナルだからだ。禁煙・禁ベイプはその典型。彼が加えたのは発明ではなく『少しだけ良い体験と、圧倒的に上手いマーケティング』だった。学び:レッドオーシャンは避ける対象ではなく、需要が保証された入口になり得る。
■ 型2:コードを書かず、“何を作るか/どう売るか”に100%を割く 彼はエンジニアではないし、AIにコードを書かせるバイブコーダーでもない。開発はUpwork、デザインは99designsに外注し、MVPは$5,000以下で仕上げる。これが効くのは、個人開発者のボトルネックが多くの場合『実装』ではなく『売れるものを選び、売り切る』側にあるからだ。実装を他人に任せることで、彼は自分の時間を最も付加価値の高い意思決定——アイデア選定とマーケティング——に集中投下する。「95%はマーケティング」という彼の言葉は精神論ではなく、リソース配分の設計思想だ。
■ 型3:有料広告ゼロ・オーガニックTikTokを“数百本”量産する 集客の心臓部はTikTok。ただし『バズる動画を考える』のではなく、既にバイラルしている禁煙・ベイプ動画の“型”(フック・尺・見せ方)を研究し、それを真似た短尺を数百本という物量で投下する。当たりが出たらその型を繰り返す。有料広告に頼らないことで、(1)CACゼロで需要と刺さる見せ方を同時に学べる (2)当たった型は他クリエイターにも横展開できる、という複利が効く。本人が売却告知で「Hundreds of organic TikToks(数百本のオーガニックTikTok)」と明言している通り、これは思いつきではなく物量戦だ。
■ 型4:ハードペイウォール×SuperwallのA/B×RevenueCatのLTV計測 収益化は“機能に触れる前にトライアル→$9/週”というハードペイウォール。ここでSuperwallを使って価格・画面・見せ方をA/Bテストし、RevenueCatでLTVと継続率を数字で追う。安いアプリ単価でも、転換率と継続を運用で上げれば月商$40Kは成立する。作りっぱなしにせず『どの画面をどの順で見せれば課金に至るか』を計測ドリブンで詰めるのが、$40K MRRとその先のexit評価額を支えた土台だ。
■ 型5:勝ったら“売る”——アプリを資産として設計し、次の大勝負に回す 最大の差別化がこれだ。多くの個人開発者は当たったアプリを持ち続けて運用に埋もれる。Cravottaは違い、Puff Countを大手アプリスタジオへ売却した(本人2度目のexit)。事業を『育てて売れる資産』として最初から設計し、exitで得た資金と信用を次の大勝負——ブランドとクリエイターを繋ぐマーケットプレイス『Posted』(2024年7月ローンチ・無資金)——へロールアップしている。個人開発者にとっての示唆は明快で、“1本のアプリに一生を捧げる”必要はない。作る→売る→次、という資本回転そのものを戦略にできる。
■ 幸運と型を切り分ける冷静さ 最後に、彼の原点である『Wordle!』の逸話が示すのは、幸運の扱い方だ。18歳で作った古いアプリが、無関係なNYT版Wordleの流行で偶然バイラルし収益が発生したとき、彼はその$50,000を寄付し、アプリをAppLovinへ譲った。棚ぼたを“自分の実力”と勘違いせず、再現できる型(型1〜5)を淡々と磨く——その規律こそが、運任せでない2度目のexitを生んだ。
全事例を横断した『集客の型』レポート(準備中)
個別の事例では見えない「どの集客手法が、どのカテゴリで、どれくらい効いたか」を全事例の数字から集計した有料レポートを準備しています。公開時に先行案内を受け取れます。
関連する事例
- 健康・フィットネスCal AI
17歳が高校の教室で作ったCal AI —「料理を撮るだけ」のカロリー記録アプリが18ヶ月でARR約75億円に到達しMyFitnessPalに売却されるまで
Zach Yadegariら10代の創業チームが作った写真カロリー記録アプリ。料理を撮るだけでAIがカロリーを推定する。外部資金ゼロで18ヶ月・ARR約$50M、累計1,500万DLに達し、2025年にMyFitnessPalへ売却された。
18ヶ月月商換算約6.3億円/月TikTokショート動画インフルエンサー活用Instagram - 健康・フィットネスStella
「観客が先、プロダクトは後」— 4.5Mフォロワーの発信者がコードを1行も書かずにAIで作ったマニフェステーションアプリStellaが、ローンチ約2ヶ月でMRR約$30万に到達するまで
移民出身の発信者 Sarah Perl(@hothighpriestess)が、数年かけて築いた4.5M人のマニフェステーション界隈のオーディエンスを土台に、コードが書けないままAI(Claude Code / Cursor)でStellaを構築。ローンチ約2ヶ月でMRR約$27.5万〜$30万、有料課金者12,000人に到達した“流通(distribution)先行”の代表例。
2ヶ月月商換算約4,125万円/月TikTokInstagramショート動画インフルエンサー活用 - 健康・フィットネスQUITTR
10代3人が約10日で作ったQUITTR —「ポルノ断ち」デジタルウェルネスアプリが外部資金ゼロで4ヶ月に月商$250Kへ
Alex Slater(19)らティーン3人が作った、ポルノ依存からの離脱を支援するデジタルウェルネスアプリ。SwiftUI+Firebase+Superwallで約10日で構築し、初月$37K→4ヶ月で$250K MRRへ。外部資金ゼロ、Reddit・TikTok・ミーム広告で急伸。
4ヶ月月商換算約3,750万円/月インフルエンサー活用TikTokミーム起点X (Twitter)