コードは一行も書かない――元脚本家がClaude Codeだけで書いた10万行のAI脚本執筆ツールLaper、8カ月で月商$4万超に
韓寒の映画会社で脚本家をしていた赵纯想が、美団共同創業者の一言をきっかけに開発したAI脚本執筆ツールLaper。コードは手作業ゼロ・Claude Codeだけで10万行超を実装し、招待制ベータ開始から8カ月でMRR$40,708・有料利用者1,165人に到達した。
- 月商換算
- 約611万円/月
- 成長期間
- 8ヶ月
- ローンチ
- 2025
この事例の要点
- 自分が長年味わった業界特有の『地味な摩擦』を、当事者にしか分からない解像度で製品化する
- ソフトウェア開発の概念(バージョン管理・ファイルシステム)を全く別の専門領域(創作)に輸入して差別化する
- 専門家からの提案は、その場で拒絶しても後から自分の専門性と結び付けて再解釈してみる
どの痛点を、どう見つけたか
脚本執筆ソフトの多くは『書式(フォーマット)の管理』という見えない労働に忍耐を強いる。シーン・キャラクター・場所といった要素はスプレッドシートやメモで別管理され、一箇所を直しても全体の整合性を人力で追いかける必要がある。赵纯想自身が脚本家として何年も味わったこの摩擦——プロの脚本執筆に不可欠なのに誰も進んで解こうとしない地味な苦痛——がLaperの出発点になった。
背景とプロダクト
Laperは、脚本家・監督・絵コンテ担当者向けの「創作OS」を掲げるAI脚本執筆・プリプロダクションツールだ。シーンの自動補完や台詞・ト書きの提案、キャラクター相関図の自動生成、ストーリーボード作成までを一つのエディタでこなす。特徴的なのは設計思想で、キャラクター・場所・シーンといった要素をそれぞれ独立したファイルのように扱い、各要素がGitのようなバージョン履歴を持つ「物語のファイルシステム」構造を採用している。AIをチャット画面として別に開かせる“ツール”ではなく、入力速度が上がったように感じられる自動補完として編集画面に溶け込ませているのも特徴だ。
作ったのは赵纯想(Zhao Chunxiang、本名 赵翔宇)。コードを書く前は作家・脚本家として活動し、韓寒(Han Han)が興した映画会社「亭東影業」で数年間、拉片(過去の映像を1カット単位で研究する脚本家の基礎訓練)や脚本執筆、さらに1年ほど俳優業もこなした人物だ。その後インディー開発者に転身し、大規模言語モデルを使った食事記録アプリ「胃之書(Belly Book)」をヒットさせた実績を持つ。
Laper誕生のきっかけは意外な人物との出会いだった。知人の紹介でビデオ通話をした相手は、美団(Meituan)の共同創業者で、のちにAIスタートアップ「光年之外」を興した王慧文(Wang Huiwen)。赵纯想が別のメッセージアプリの構想を売り込んだところ、王から「脚本家の経験を活かしてAI脚本執筆ツールを作ってみては」と提案された。本人はその場では気分を害し王を連絡先から消してしまったというが、後日「AI screenwriter」を検索し始めたことが、結果としてLaperの着想につながった。
開発は2025年秋にアルファ版が姿を見せ、2025年12月18日に招待制ベータを開始。招待コードは、指定のツイートをWeChatのモーメンツに転送し5分以上表示したままスクリーンショットを撮る、という独特の方式で配布され、ベータ開始からのべ1,800人超が参加した。X(旧Twitter)・小紅書・TikTokでLaperの体験を投稿すれば追加コードや最大60日分の無料会員資格がもらえる紹介制度も用意された。
もっとも際立つのは開発体制そのものだ。赵纯想自身の発信によれば、Laperは10万行を超えるコードベースを持つ本番稼働中のWebアプリだが、手作業でのコーディングはゼロ、すべてClaude Codeが書いたという。ソロ創業から半年余りでチームは5人体制に拡大し、招待制ベータ開始から8カ月ほどで月次経常収益(MRR)は$40,708、有料サブスクリプションは1,165件に達した。
料金
無料プラン(Junior)あり:フルエディタ・1日60クレジット・脚本プロジェクト2本まで。有料はSenior 月$20、Elite 月$60(月2,000AIチャット・月2,800クレジット・脚本/映像各20プロジェクト)、Master 月$100(AIチャット無制限・月6,000クレジット・プロジェクト無制限)、Legend 月$400(プロ制作向け最上位プラン)。年払いは月額×12の80%(公式料金ページで確認)。
本人の発信(一次情報)
どうやって作ったか
- 自分が長年味わった業界特有の『地味な摩擦』を、当事者にしか分からない解像度で製品化する — 韓寒の映画会社で脚本を書き拉片の訓練を積んだからこそ、業界標準フォーマット(場面見出し・台詞・ト書きのインデントや改行ルール)の管理という『見えない労働』が本当のボトルネックだと理解していた
- 専門家からの提案は、その場で拒絶しても後から自分の専門性と結び付けて再解釈してみる(王慧文からの『脚本家の経験を活かしてAI脚本執筆ツールを』という提案に苛立って連絡先を消したが、数日後に『AI screenwriter』を検索し始めていた)
- ソフトウェア開発の概念を全く別の専門領域に輸入して差別化する — キャラクター・場所・シーンを独立したファイルのように扱い、各要素がGitのようなバージョン履歴を持つ『物語のファイルシステム』構造にする
- AIをチャット画面として別に開かせる“ツール”にせず、入力速度が上がったように感じられる自動補完として編集画面に溶け込ませる
- コーディングを人力ゼロでAIコーディングツールに委ねる — 10万行を超える本番稼働中のWebアプリを、手作業でのコーディングゼロですべてClaude Codeに書かせる
- AIに任せた範囲
- 手作業でのコーディングはゼロ。10万行超の本番コードベースをすべてClaude Codeが書いた(作者は元脚本家・俳優で非エンジニア)
どうやって広めたか
- 招待コードの取得条件に『友人の目に触れる行為』を組み込み、登録そのものを口コミ装置に変える — 指定のツイートをWeChatのモーメンツに転送し5分以上表示したままスクリーンショットを撮る、という一見面倒な方式にする
- この摩擦をあえて設計する — 単なる登録フォームでは得られない『友人の目に触れる時間』を強制的に作り出し、招待コード1件ごとに周囲への露出を伴わせる
- 複数のSNS(X・小紅書・TikTok)で同時多発的に紹介ポイントを稼がせ、投稿を分散させる(体験を投稿すれば追加コードや最大60日分の無料会員資格がもらえる)
- 招待制ベータで希少性を作りつつ、のべ1,800人超を段階的に入れる
- 『開発プロセスの100%をAIに任せた』という物語自体を発信材料にする(プロダクトのAI機能そのものより、この開発体制の物語性が刺さった)
再現できる手順
- 1自分が長年味わった業界特有の『地味な摩擦』を、当事者にしか分からない解像度で製品化する
- 2ソフトウェア開発の概念(バージョン管理・ファイルシステム)を全く別の専門領域(創作)に輸入して差別化する
- 3専門家からの提案は、その場で拒絶しても後から自分の専門性と結び付けて再解釈してみる
- 4招待コードの取得条件に『友人の目に触れる行為』を組み込み、登録そのものを口コミ装置に変える
- 5複数のSNS(X・小紅書・TikTok)で同時多発的に紹介ポイントを稼がせ、投稿を分散させる
- 6コーディングを人力ゼロでAIコーディングツールに委ね、非エンジニアでも本番品質のSaaSを出荷する
実際に使ったチャンネル
つまずき・苦労
公表されている月次収益$40,708・有料利用者1,165人は、赵纯想自身がStripeを接続した独立トラッカーTrustMRRの数字であり、完全な第三者監査ではない。同時期の集計サイトには$30,200・898件というより低いスナップショットもあり、急成長中である一方で時点によるブレが大きい。共同創業者の有無・5人チームの内訳・開発拠点(運営会社の登録は香港、本人の活動実態は中国本土寄り)についても独立ソースでは確定できていない。
深掘り分析
【深掘り】赵纯想が脚本家からAI起業家へと転身し、Laperを「脚本家が本当に欲しかった道具」に育てるまでの設計思想と集客の型を分解する。
脚本家だったからこそ見えた「見えない労働」
脚本執筆ソフトの多くは、AIによる文章生成を売りにする一方で、業界標準フォーマット(場面見出し・台詞・ト書きのインデントや改行ルール)の管理という地味な作業を放置してきた。赵纯想は韓寒の映画会社で何年も脚本を書き、拉片(過去の映像をコマ単位で研究する訓練)を積んだ現場の人間として、この「フォーマット管理という見えない労働」こそが脚本家の時間を奪う本当のボトルネックだと理解していた。技術者が後から想像で作る脚本ツールと違い、当事者自身が設計したからこそ、AIによる自動整形・自動補完という一見地味な機能に的を絞れた。
ソフトウェア工学の発想を物語に輸入する
Laperの核となる設計は、キャラクター・場所・シーンをそれぞれ独立したオブジェクト(ファイル)として管理し、Gitのようにバージョン履歴を持たせる「物語のファイルシステム」という発想だ。脚本の変更が積み重なるとキャラクター設定や伏線の整合性が崩れやすいという、創作活動につきものの課題を、ソフトウェア開発の「差分管理」の概念でそのまま解こうとしている。エンジニア出身ではない赵纯想が、AIコーディングツールを使い倒す過程でこの思想に辿り着いたこと自体が、非エンジニアでも構造的な発想を実装に落とし込める時代を象徴している。
王慧文の一言と、断ってから拾うまでの間
美団の共同創業者で、のちにAIスタートアップ「光年之外」を興した王慧文からの「脚本家の経験を活かしてAI脚本執筆ツールを作ってはどうか」という提案は、当初は歓迎されなかった――赵纯想は苛立ってその場で連絡先を消したと本人が振り返っている。それでも数日後には「AI screenwriter」を検索し始めていた、というくだりは、専門家からの直言はその場で拒んでも後から効いてくる、という遠回りな学びを示している。他人からの提案をそのまま採用したのではなく、拒絶した後で自分の専門性(脚本)と重ね合わせて再解釈したことが、結果的に「自分にしか作れないもの」に辿り着いた分岐点だった。
招待コードを「広告」に変える設計
ベータの招待コードは、指定ツイートをWeChatのモーメンツに5分以上表示してスクリーンショットする、という一見面倒な条件で配布された。この摩擦にはあえての設計意図がある――単なる登録フォームでは得られない「友人の目に触れる時間」を強制的に作り出し、招待コード1件ごとに周囲への露出を伴わせる仕組みだ。加えてX・小紅書・TikTokでの体験投稿に対する紹介ポイント制度(最大60日間の無料会員)を重ね、複数のSNS上でLaperの名前が同時多発的に流通するよう設計されている。
「AIが全部書く」という開発そのものの物語性
Cal AIのようなヒット作の多くが「既存の強力なAIをどう製品体験に翻訳するか」を競う一方で、Laperの物語性はプロダクトのAI機能そのものより「開発プロセスの100%をClaude Codeに任せた」という点にある。10万行を超える本番稼働中のコードベースを手作業のコーディングなしで書き上げたという赵纯想自身の発信は、AI開発が非エンジニア出身者にも本格的なSaaSを作らせる段階に入ったことを象徴する事例として、本サイトの読者に直接刺さる再現性を持つ。
数字の性質と留保
公表されている月次経常収益$40,708・有料サブスクリプション1,165件は、Stripe連携の独立トラッカーTrustMRRの表示によるもので、本人が接続したデータという点では完全な第三者監査ではない。一部の集計サイトでは同時期に$30,200・898件という、より低い時点のスナップショットも見られ、直近の急成長を裏付ける一方で数値のブレも存在する。共同創業者の有無や5人チームの具体的な顔ぶれ、拠点(運営会社の登録は香港とされるが本人の活動実態は中国本土寄りに見える)についても、独立した複数ソースでの確定には至っていない。
よくある質問
- Laperはどこの国のツール?誰が作った?
- 赵纯想(Zhao Chunxiang、本名 赵翔宇)が率いる、当初はソロで始まったチームが開発したAI脚本執筆ツール。赵纯想は韓寒の映画会社・亭東影業で脚本家をしていた経歴を持つ。運営会社の登録地は香港とされるが、本人の発信内容は中国本土での活動が中心に見える。
- Laperはいくらで使える?
- 無料のJuniorプランに加え、Senior 月$20〜Legend 月$400までの4段階の有料プランがある(年払いは実質2割引)。詳細は本文の「料金」欄を参照。
- Laperの開発コードは誰が書いた?
- 赵纯想自身の発信によれば、10万行を超えるコードベースは手作業のコーディングを一切行わず、100% Claude Codeが書いたという。
全事例を横断した『集客の型』レポート(準備中)
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