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AI Dev Cases
Pushscroll

コードより先に『偽のデモ動画』で検証したPushscroll —『腕立てしないとSNSを開けない』アプリが4ヶ月で月商$30K・30万DLに届くまで

Mario Ortiz ManeroとAlejandro Sanchezが作った『ドゥームスクロールをフィットネスに置き換える』アプリ。SNSを開く前に腕立て等の運動を課す(1腕立て=1分)。二人は作る前に、まだ存在しないアプリの偽デモ動画をSNSに投稿して需要を確認し、その後に開発。オーガニック短尺だけで約4ヶ月・月商$30K、約30万DLに到達した。

公開日: 2026年7月25日3分で読了一次情報で検証済み · 3
月商換算
約450万円/月
成長期間
4ヶ月
ユーザー数
30万
ローンチ
2025
コードより先に『偽のデモ動画』で検証したPushscroll —『腕立てしないとSNSを開けない』アプリが4ヶ月で月商$30K・30万DLに届くまで

この事例の要点

  • コードを書く前に『まだ無いアプリ』の偽デモ動画を作り、SNSの反応で需要を検証する(最初のMVPはコードでなくコンテンツ)
  • バズった1本を設計図にする — 人が最も反応した見せ方を、そのままプロダクトのコア体験へ翻訳する
  • レッドオーシャン(スクリーンタイム管理)を避けず、禁止でなく運動で解除という一つの切り口だけで割る

どの痛点を、どう見つけたか

『無限スクロールをやめたいのにやめられない』は、ほぼ全員が心当たりのある万人共通の痛み。スクリーンタイム制限アプリは山ほどあるが、多くは『ただ開けなくする』ので苦痛でしかなく、我慢比べに負けてすぐ解除される。Pushscrollはこの痛点に別角度から入った——開くのを禁じる代わりに、開く前に運動を1セットやらせ、SNSのドーパミンを身体を動かす快に付け替える。『やめたい』ではなく『開くたびに少し健康になる』へ設計を反転させたのが入口だった。

背景とプロダクト

Pushscrollは、SNSを開く前に短い運動(腕立て・スクワット・プランク等)を課すスクリーンタイム・アプリ。スマホのカメラでポーズを検出してレップを数え、『1腕立て=1分のアプリ時間』のように運動で利用時間を買う仕組みにした。ただ開けなくするブロッカーではなく、ドゥームスクロールの衝動を運動へ振り替えるのがコアだ。

作ったのはMario Ortiz ManeroとAlejandro Sanchezの二人(スイスのPushscroll GmbH、2025年設立、ブートストラップ)。Marioは元Lyftのバックエンドエンジニアで、Rust界隈のOSS(Spotifyクライアント rspotify など)でも知られる開発者。派手な資金調達も大きな観客資産も無い、持たざる二人組のスタートだった。

この事例の一番の学びは、プロダクトの中身より『順番』にある。彼らはコードを書く前に、まだ存在しないアプリの偽のデモ動画を作ってSNSに投げた。その1本が約8万再生を集め、コメント欄が『これ作って』『どこでダウンロードできる?』で埋まった。需要が確認できてから、初めて本物を開発する——『最初のMVPはコードではなくコンテンツ』という発想だ。

開発後の集客も一貫してオーガニックの短尺動画。運動して初めてSNSが開く、というビフォーアフターが一目で伝わる題材なので、動画1本が広告とデモを兼ねる。この型で、アプリを作ってから約4ヶ月で月商約$30K、累計約30万DL、有料約4,000人に到達した。スクリーンタイム管理というレッドオーシャンを、たった一つの切り口(運動で解除)と、作る前に売れると確かめる順番で攻略した事例だ。

料金

無料DL。App内課金は月$14.99 / 年$24.99〜$59.99。ほかに期間表記の無い項目が$8.99〜$29.99(App Store 表記。同一期間に複数の価格が並ぶためA/Bテスト中とみられる)。

アプリ画面

  • ホーム画面。残り利用時間「10 min」と連続日数144が表示され、1日の目標(15/30)のスライダー、その下に Push-ups(腕立て伏せ)や Squats(スクワット)といった種目の選択肢が並ぶ。見出しは「Replace Doomscrolling with a Healthy Habit」
  • カメラで運動の回数を数える画面を3台並べた紹介イメージ。腕立て伏せの姿勢の人物に骨格の推定線が重なり、回数のカウンターと「Add 4 Minutes」(運動して利用時間を追加する)ボタンが表示されている。下にユーザーレビューが添えられ、見出しは「Exercise to Unlock addictive Apps」
  • 対象アプリを開こうとしたときのブロック画面。Instagram のアイコンの下に「Instagram is Blocked by Pushscroll」と表示され、「利用時間を使い切りました。Pushscroll で運動すると時間を追加できます」という説明と Continue / Close のボタンが並ぶ。見出しは「Limit or Block all addictive Apps.」
  • 利用開始時の説明画面を2枚並べた画像。1枚目は現在のペースだと生涯で「22 years」を画面を見て過ごす計算になるという試算、2枚目は Pushscroll を使えばそのうち「6 years+」を取り戻せるという説明で、それぞれ continue ボタンが付く。見出しは「Reclaim Years of your Life」

画像はApp Store・公式サイトの掲載画像を各提供元から直接表示しています(当サイトには保存していません)Pushscroll

Pushscroll growth channels and tech stack

どうやって作ったか

  1. コードを1行書く前に、まだ存在しないアプリの偽のデモ動画を作ってSNSに投げる(最初のMVPはコードではなくコンテンツ)
  2. その1本が約8万再生を集め、コメント欄が『これ作って』『どこでダウンロードできる?』で埋まったのを需要の実弾テストとして読む(反応が薄ければ企画を捨てればよく、開発に数ヶ月を溶かすリスクをゼロに近づけられる)
  3. バズった1本を設計図にする — 人が最も反応した見せ方(運動しないとアプリが開かない、というビフォーアフター)を、そのままプロダクトのコア体験へ翻訳する
  4. レッドオーシャン(スクリーンタイム管理)を避けず、『禁止ではなく運動で解除』というたった一つの切り口だけで割る
  5. スマホのカメラでポーズを検出してレップを数え、『1腕立て=1分のアプリ時間』のように運動で利用時間を買う仕組みにする

どうやって広めたか

  1. ビフォーアフターが数秒で伝わる題材を選び、動画1本を広告・デモ・口コミの種として兼用する(スクロールしたいのにまず腕立て、という滑稽さが人に見せたくなる)
  2. 有料広告に頼らず、複数プラットフォームの短尺を物量で回して当たりの本数を増やす
  3. 伸びたものを増幅する(制作コストの低い動画を数多く打ち、当たりに寄せる物量×増幅の王道)
  4. 単価より普及を優先し、少人数・ブートストラップで固定費を抑えたまま黒字で積み上げる(約4,000人の有料で月商$30K規模)
最初のユーザー
アプリが存在する前に投稿した偽デモ動画(約8万再生)のコメント欄に集まった人たち
初期の広告費
$0(有料広告に頼らず、複数プラットフォームのオーガニック短尺のみ)

再現できる手順

  1. 1コードを書く前に『まだ無いアプリ』の偽デモ動画を作り、SNSの反応で需要を検証する(最初のMVPはコードでなくコンテンツ)
  2. 2バズった1本を設計図にする — 人が最も反応した見せ方を、そのままプロダクトのコア体験へ翻訳する
  3. 3レッドオーシャン(スクリーンタイム管理)を避けず、禁止でなく運動で解除という一つの切り口だけで割る
  4. 4ビフォーアフターが数秒で伝わる題材を選び、動画1本を広告・デモ・口コミの種として兼用する
  5. 5有料広告に頼らず、複数プラットフォームの短尺を物量で回して当たりの本数を増やし、伸びたものを増幅する
  6. 6単価より普及を優先し、少人数・ブートストラップで固定費を抑えたまま黒字で積み上げる

つまずき・苦労

看板の月商$30Kはオーガニック短尺という、止めれば止まるエンジンの上に立っている。物量を止めれば視聴もDLも細りやすく、スクリーンタイム管理はレッドオーシャンゆえ模倣も速い。再現の心臓は、偽デモで検証する胆力——反応の薄い企画を潔く捨て、当たった見せ方に妥協なく寄せられることが前提で、需要を確かめずに『とりあえず作る』へ戻れば同じ海に沈む。ポーズ検出という体験の摩擦(場所・明るさ・面倒さ)で離脱する層がいる点も、健康系アプリ共通の継続率リスクとして残る。

深掘り分析

【深掘り】Pushscrollの本質は『腕立てで解除』という機能ではなく、作る前に売れるか確かめるという順番の設計にある。持たざる二人組がどうやってリスクを最小化しながら月商$30Kに届いたのかを分解する。

最初のMVPはコードではなくコンテンツ

多くの個人開発者は『まず作る→後で集客に困る』の順で溶ける。Pushscrollは逆にした。コードを1行書く前に、まだ存在しないアプリの偽のデモ動画を制作してSNSに投稿。その1本が約8万再生を集め、コメント欄が『作って』『どこで買える?』で溢れた。これは無料でできる需要の実弾テストだ。反応が薄ければ企画を捨てればよく、開発に数ヶ月を溶かすリスクをゼロに近づけられる。重要なのは、バズるかどうかを運任せにせず、開発の前段で確かめてしまう点にある。

バズった1本を設計図として使う

偽デモが当たった意味は二重だ。第一に需要の証明。第二に、どの見せ方が刺さるかという勝ちクリエイティブの発見。彼らは反応が最大だった見せ方——運動しないとアプリが開かない、というビフォーアフター——をそのままプロダクトのコア体験に翻訳した。つまりコンテンツで見つけた当たりの角度が、機能仕様とマーケの両方を同時に規定する。作ってから訴求を探すのではなく、訴求が決まってから作るので、ローンチ直後から刺さる。

レッドオーシャンを避けず、一つの切り口で割る

スクリーンタイム管理は競合だらけの領域だ。だが彼らは新カテゴリを探さず、既に需要が証明された市場に、たった一つの差別化(禁止ではなく運動で解除)で切り込んだ。レッドオーシャンは需要がある証拠でもある。勝負は市場の新しさではなく、同じ痛みに対する切り口の鋭さに移る。やめさせる系がひしめく中で『開くたびに健康になる』へ反転させたことが、既視感の中の新鮮さを生んだ。

プロダクト=コンテンツ、で流通コストを下げる

ソーシャル拡散の最難所は、見せて伝わるかだ。Pushscrollはビフォーアフター(スクロールしたいのに、まず腕立て)が数秒で伝わり、しかも滑稽で人に見せたくなる。だから1本の動画が広告・デモ・口コミの種を兼ねる。彼らはこの相性の良さを使い、有料広告に頼らず複数プラットフォームの短尺を回して当たりの本数を増やした。制作コストの低い動画を数多く打ち、伸びたものを増幅する——物量×増幅の王道だ。

単価より普及、ブートストラップの規律

約4,000人の有料で月商$30K規模。単価を釣り上げるより、運動して健康になるという体験が口コミ・UGCと相性が良い普及モデルを取った。外部資金は公表されておらず、二人の小さな体制で固定費を抑えたまま黒字を出している。派手なARR宣言ではなく、確かめてから作り、当たった見せ方に集中し、小さく回すという、持たざる個人開発者にとって最も再現しやすい積み上げ方だ。

再現するときの注意

この型の心臓は、偽デモで検証する胆力にある。反応が出なかった企画を潔く捨てられること、そして当たった見せ方に妥協なく機能を寄せられることが前提になる。逆に、需要を確かめずに『とりあえず作る』へ戻った瞬間、レッドオーシャンの海に沈む。順番こそが堀だ。

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